良質な服を着たければ「誰がアパレルを殺すのか」を読むべし!

結婚してもうすぐ2年になり、著しく進歩したことと言えば、
料理の腕はもちろん、女性ファッションへの関心が増したこと。

私が一番最初にこのブランドは凄い!と感じたFOXEYは、
投資家としては残念ながら非上場で業績が不明だったが、
その後、日経新聞でも取り上げられていた。

「大手アパレル不振の中で2016年8月期の売上高は前期比10%増の見込みだ。」

FOXEYは「バロン」という型の6万円台のワンピースが、
入荷日には品切れするという異常な人気ぶり。
こんな売れ方をするブランドだからほとんどセールをしない。

ゆえに業績好調で原価率の高い商品を販売することができ、
顧客の獲得にもつながる好循環ができているのではないだろうか。

こんな気付きを投資に生かせないものか?
そして業界の構造やブランドを運営する企業の業績を知ることで、
余計なコストが上乗せされていない良質な服と出会えるのではないか?

こんな想いに答えてくれる一冊が、

低迷するアパレル業界の問題だらけの構造はもちろん、
原価率の高い良質な服を売るブランドの見分け方まで理解できる。

ブランド戦略を取り違えた大手アパレル

オンワード、ワールド、TSI、三陽商会という大手アパレル4社は、
右肩上がりの時代のビジネスモデルから抜け出せず、不振にあえいでいる。

糸や生地のメーカーや染色業者が「川上」で大量に「部品」を作り、「川中」のアパレル企業が商品を「企画」し、縫製工場が「製造」を担う。大量に生産された商品は、「川下」の百貨店やショッピングセンター(SC)にごっそりと納品され、一気に売られる。

ブランド戦略の軸に百貨店のいい場所を取ることに置き、
百貨店の床数増加に合わせて、似たり寄ったりの新たなブランドを乱発。
結果として売れ残りの山ができセールを連発する。

定価で売れないコストの一部は消費者がかぶることになり、
値段の割に質の良くない商品をつかまされることになる。

そうなれば川上から川下までを把握したファーストリテイリングが、
コストパフォーマンスの高さから消費者の心をつかんだのは当然の展開。
※著者によると一般的には原価率20%程度のところユニクロは30~40%程度。

大手アパレルも危機は認識しているが、改革の方向性が定まらず迷走中。
解決策を足下の改革ではなく競争の厳しい分野への多角化に求めている。
たとえばオンワードは今年から食品販売のネットビジネスを立ち上げ、
早速割引クーポンをばらまき続ける定価無視の姿勢は変わらない。

大手アパレルのブランドから値段に見合った服を選ぶことはできるだろうか?
対処策として考えられるのは、ブランド別の業績を調べることだろうか。
ワールド以外の3社は上場企業だから決算説明会などの資料に示されている。
セールをしなければ売れないブランドは業績が悪く、原価率も低くなるだろうから。

今求められるブランドのありかた

バーニーズ・ニューヨーク幹部のマシュー・ウールシー氏が、
2015年の米国小売業大会でこんなことを語ったのだとか。

ミレニアル世代にとってのラグジュアリーは、どこで作られたか、どのように作られたかに価値がある。ブランドの名前よりも質、職人技、信頼性が、はるかに大切になっている。

そしてアメリカでまさにその路線を行く会社として、
本書で紹介されているのが製造小売ブランドのエバーレーン

商品ごとのコストを明示する”エバーレーン”

エバーレーンはマイケル・プレイスマンCEOが、
自分の着ている洋服が原価の8倍の値段で販売されていることを知り、
テクノロジーを使えば変えられると感じ、2010年に創業した会社だ。

その消費者目線の経営姿勢を伝えるには以下の記述を紹介すれば十分だろう。

出店を抑え、広告宣伝をやめて浮いた資金は、商品の素材やデザイン、顧客サポートといった、アパレル企業が最も大事にすべき部分に投下。質の高い商品を、適正な価格で販売する。

生地や縫製、流通のコストがいくらで、どれくらいのマージンを取っているかといった、従来のアパレル企業が明らかにしたがらなかった情報を、サイト上で明示している。

工場の詳細を商品ページから閲覧でき、場所や内部の様子など、製造過程の詳しい情報も紹介。働く人々の労働条件に配慮を怠っていないことをアピールする。

消費者が知りたいと思うことを徹底的に情報開示してファンを増やす手法は、
この分野に限らず様々な業界で拡大してゆくに違いない。

原価率50%の服を売る”TOKYO BASE”

日本にも業界の慣習に風穴を開け、急成長した企業がある。
2015年9月に東証マザーズ、2017年2月に東証1部に上場したTOKYO BASE
創業者の谷正人CEOは経営破綻した浜松市の老舗百貨店、松菱の創業者一族。

同社のブランド、ユナイテッドトウキョウは国内工場との直接取引が特徴
原価率を下げるための中国での大量生産に活路を見いだすのではなく、
国内で生産することでシーズン直前に発注することも可能となる。

需要に合った商品を投入して売れ残りを防ぎ、これが利益率の高さにつながっている。定価で売り切ることを前提として商品を作り、余計な在庫と処分リスクを抑えているので、原価率を高めに設定することができるという好循環も生み出している。商品代金の半分までを原価に割り当てることができるため、販売価格からは考えにくい高級素材を使うこともできる。

ユナイテッドトウキョウの商品は原価率50%と他のブランドを圧倒。
また好調な業績から販売員の待遇向上にも努めている。

谷氏のビジネスモデルは、計数管理を徹底しながら原価率の高い良質な商品を適正規模で生産し、それを売る販売員が意欲的に仕事に取り組めるよう待遇向上に努める、というものだ。多くのアパレル企業が、甘い計数管理のまま原価率の低い商品を大量生産し、販売員は使い捨てすることを前提に低い処遇に留めている。谷氏は、長く続くアパレル業界の”悪習”を否定してトウキョウベースの成長につなげた。

TOKYO BASE の株価は東証一部上場後に2倍になっている。
今から投資するにはより詳細な分析が必要だ。