不確実な未来を生き抜くための直感力

小林秀雄が当時の各界の第一人者と語り合った対談集「直観を磨くもの」。
ノーベル賞物理学者、湯川秀樹の話がおもしろかった。

創造を導く直感力を身につけるためには?

小林が著書に記したモーツァルトの作曲法が、
アインシュタインが推論の出発点を掴む感覚に似ている、
という湯川博士の指摘が興味深い。

論理とか数学とか、純粋の音楽とか、そういう時間制をもったものでも、実際それを天才が把握するときには、やはり直感的に、同時的なものとして把握しているということは、非常に面白い点だと思います。そこに新しい発見とか、あるいは創造的な物の本質が窺われるような気がします。これは科学の世界でもやはり同じだと思いますね。一般に推論といわれるものは時間的な順序があるはずですが、順序通りに出てくるのではなしに、いっぺんにパッと出てくるというところが、何ともいえぬ面白いところだと思いますね。

そしてこうした天才の直感に近づくために自らが心がけていることは、

私としてはいろいろなほかの人の仕事とか、新しい発見とか、そういう外的な刺激をできるだけ吸収し、それに対する感受性を鋭敏にしておくことと、それから始終考えていること、これ以上に手はありませんね。

また物理学で画期的な発見をする研究者に20代が多いのは、
知識や経験の乏しさが、思い切りの良さにつながるからだと語る。

できるだけそういう意味での若さを自分に保存しておくことが大切だと思います。新鮮な感受性と、一つのことをやり出したら他のことは忘れてしまうというようなところがないとなかなか進みませんね。

共鳴する天才たちの考察

以上のような湯川博士の天才・直感・創造に対する考察は、
多くの天才たちの言葉と共鳴しているように思える。

創造しようとするならば、直感に従いなさい。」(レオナルド・ダ・ヴィンチ

創造は直感から生まれる。論理は後からついてくる。

多面的な視野で臨むうちに、自然と何かが沸き上がってくる瞬間がある。・・・ある瞬間から突如回路がつながるのだ。この自然と沸き上がり、一瞬にして回路をつなげてしまうものを直感という。だから、本当に見えているときは答えが先に見えて理論や確認は後からついてくるものだ。」(羽生善治直感力」)

多分野への好奇心が直感を鍛える。

将棋にかぎらず、ぎりぎりの勝負で力を発揮できる決め手は、大局観と感性のバランスだ。感性はどの部分がプラスに働くというのではなく、読書をしたり、音楽を聴いたり、将棋界以外の人と会ったり…というさまざまな刺激によって、総合的に研ぎ澄まされていくものだと思っている。」(羽生善治決断力」)

日頃から新しいことに挑戦していれば、認識や感情面の筋肉が鍛えられ、あらゆる点で能力を発揮しやすくなる。…自分の仕事に打ち込むあまり、好奇心にあふれた人間であることをやめてはいけない。」(ガルリ・カスパロフ決定力を鍛える」)

専門的や知識・経験に縛られていては直感を発揮できない。

常に猛烈なシロウトとして、危険を冒し、直感に賭けてこそ、ひらめきが生まれるのだ。」(岡本太郎

一見して馬鹿げていないアイデアは見込みがない。」(アインシュタイン

不確実な世界を生き抜くヒント

天才たちの言葉を並べていくと、一般人とは無縁の世界のように思うかもしれない。
でも私には未来が読めないこの世界で生き抜くヒントが隠されているように感じる。

おそらく私たちの脳が規則性を望んでいるせいで、
今日真実であることは、明日も真実であると信じたくなる。
でも過去や現在の自分に論理的解釈をつけてこだわっているうちは、
この世界の不確実性にいいように振り回されるだけではないだろうか。

身近な例を出せば、近年話題になっている人工知能の進歩。
将来的に今の自分の仕事が人工知能に取って代わられたときに、
そのまま没落してしまうか? 新たに創出された仕事に乗り換えられるか?

こうした運命の分かれ道で偶然の幸運をつかめるかどうか?
天才たちが創造の源とする直感力やそれを鍛えるための方法に、
学ぶことが多いのではないだろうか。