藤原伊房。公文書偽造に密貿易とやらかし放題。

古今和歌集には「よみ人しらず」を隠れ蓑にして、
紀貫之ほか撰者の自作の和歌が収録されているのでは?
というのが昨日の話。

これについて調べていたら似たような話があり、
勅撰和歌集の清書を命じられた人物が自分の和歌を書き足してしまう!
なんて珍事件があったことを知った。

勅撰和歌集 偽造事件

1086年に完成した「後拾遺和歌集」をめぐって事件は起きた。
和歌集の原稿ができあがった時点では収録歌数が1218首だったはずが、
清書本としてできあがった歌数を数えてみると1220首になっていた。

犯人は藤原伊房(1030~1096年)。
書道の大家、三蹟の一人とされる藤原行成の孫にあたり、
その系譜を継いで、伊房もまた字がうまいことで有名だったようだ。

ただ問題なのは彼に歌人としてのプライドがあったこと。
清書を進める中で自分の歌が次の一首しか選ばれていない。

榊葉に ふるしら雪は きえぬめり 
神の心も 今やとくらむ

それに納得がいかず、自分の歌を二首加えてしまったのだ。
もちろんバレてしまいその後、太宰府の長官に任命されていることから、
文書偽造問題で左遷されたということだろう。

密貿易事件

伊房は太宰府でも事件を起こす。
1094年に中国北辺を支配していた契丹人の王国「」との密貿易が発覚。
太宰府の有する外国貿易を管理する権限を利用して稼いでいたようだ。

当時中国を支配していた宋への輸出品は、
金・水銀・硫黄・木材・刀剣・漆器・扇・干し椎茸など。
造船に必要な硫黄・木材あたりは不要と思われるので、
刀剣や九州で手に入りやすそうな干し椎茸が密貿易の対象だろうか。

この事件により伊房は免職・罰金刑となる。
亡くなる直前に正二位に復帰するが、彼の起こした事件の影響か、
その子孫は政治で重要ポストに就くことがなく、代々書家として生きている。
※ちなみに伊房のひ孫、伊行の娘に建礼門院右京大夫がいる。