1970年のSiri/星新一「声の網」

多くの情報が飛び交う電話回線の向こう側に何らかの知性が生まれる。
約50年前に星新一が描いた世界は一部は今まさに実現されようとしている。

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といった技術がまるで未来を予見したかのように小説内で描かれ、
さらにもう一歩先のシンギュラリティ(人工知能が人間を超える)後の世界まで…。
今読むのが最高におもしろい一冊と言える。

星新一には未来が見えていたのだろうか?
だが過去の書物に現在・未来が描かれているのはよくあること。

対談本「もうすぐ絶滅するという紙の書物について」のなかで、
フランスの脚本家ジャン=クロード・カリエールが紹介した話を、

「マハーバーラタ」(古代インドの叙事詩)にガノダーリという王妃が出てくるんですが、身ごもっているのに、どうしても分娩できません。けれど、彼女はどうしても分娩しなけれぱならない。早くしないと義理の姉が身ごもっているもう一人の王子が先に生まれてしまう、その前になんとしても自分の子供を誕生させなけれぱならない。というのも、先に生まれた子が王位を継ぐことになっていたからです。ガンダーリ王妃は、腕力のある侍女に鉄の棒な握らせ、腹部を力いっぱい叩かせます。すると、王妃の膣から鉄の玉が飛び出して、地面に転がります。王妃は鉄の玉を捨てて隠滅することを望みましたが、ある人が、鉄の玉な100個に割り、1つ1つを瓶に入れれば100人の息子に恵まれるだろうと進言しました。言われたとおりにすると、本当にそうなりました。ここにぼすでに人工授精のイメージが表われているのではないでしょうか。100本の瓶は、試験管の原型ではないでしょうか。

イタリアの小説家ウンベルト・エーコがこうまとめる。

「マハーバーラタ」を書いた人々が未来を予見していたわけではありません。先立つ人類の夢想を現在が現実のものにしたのです

つまり今の私たちが何を望み、何を願うのかによって、
導かれる未来も変わっていくものということなのだろう。
人々の欲求が高い分野は自然とレベルが上がるものだから。