七草の習慣が庶民に広がるのは平安末期?/百人一首15「若菜摘む」

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君がため 春の野に 出でて若菜つむ 
わが衣手に 雪は降りつつ

百人一首に収録される光孝天皇(830~887)の和歌。

意味を知らずに読むとなぜ天皇が葉を摘んでいるのか?となるが、
実はここでの「若菜」とは今でいう「春の七草」のことを指しており、
これを食べることで邪気を払い、長寿をもたらすありがたい食物。

若菜摘みの習慣はすでに万葉集にも詠まれており(1427・山部赤人)、

明日からは 若菜つまむと 標めし野に 
きのふもけふも 雪は降りつつ

中国から伝わり、奈良時代にはすでに日本に根付いていたのだろう。

「標めし野」とは縄を張って自分の物だ!と主張すること。
日本原産の野菜は、

  • ふき
  • せり
  • うど
  • 山椒
  • 山葵
  • 自然薯
  • みつば

程度でその他はほとんど外国品種と言われていることから、
当時の若菜は貴重でそれを女性に贈ることが愛情表現なのだろう。

庶民に若菜摘みが広がるのは平安時代末期から鎌倉時代初期だろうか
慈円(1155~1225)の和歌に庶民の女性が若菜を摘む情景が詠まれている。
※しづの女…庶民の女性

しづの女が 年とともに つむものは 
春の七日の 若菜なりけり

おまけで外国品種の野菜が日本で栽培され始めた時期をざっとまとめておくと。

  • 奈良時代…生姜
  • 平安時代…ねぎ
  • 室町時代…だいこん
  • 戦国時代…にんじん、きゅうり、かぼちゃ
  • 江戸時代…いんげん豆、れんこん、ごぼう、きゃべつ、さつまいも、馬鈴薯、春菊、えんどう豆、たけのこ、ほうれん草、トマト
  • 明治時代…たまねぎ、おくら、とうもろこし
  • 昭和時代…白菜、ピーマン

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