懐かしの味は香りの記憶/伏木亮「味覚と嗜好のサイエンス」

この記事は約2分で読めます。

土瓶蒸しの松茸の話から引き続き、香りと脳科学について調べている。
伏木亮「味覚と嗜好のサイエンス」にこんな記述があった。

においの記憶は確かで変質しません。味は舌から延髄、大脳各部位といくつも神経を乗り換えて眼窩前頭皮質でにおいの信号と合流します。複雑な経路を経た信号の記憶なので絶対的な味の記憶というよりも相対的な記憶です。一方、においの信号は鼻の粘膜から嗅球に入り、比較的単純な経路で眼窩前頭皮質に到達します。長い年月がたってもにおいは生々しく記憶が残るのです。」P14

私は海外に行ったことがないから分からないけど、
海外旅行に行くと、白いご飯と味噌汁が恋しくなるという話を聞く。

炊きたてのご飯や出汁の香りを欲しているということになるのかな。
でも子どもの頃の記憶がなければ、こういう感覚も存在しないことになる。

この本の著者がネズミで鰹出汁の実験した結果が興味深い。

離乳前からカツオだしを経験したグループと、離乳が完全に完了してから与えられたグループはともにカツオだしを好んだが嗜好性の強さには決定的な違いがありました。」P146

もちろん人間にそのまま当てはめることはできない。
人間の脳のニューロンの数は乳幼児期に爆発的に増加し、
10歳頃までに意味あるつながりに整理させていくことから、
おそらくこの時期の食事の記憶が、その後の食生活を左右するのだろう。

つまり私が今、菊乃井のような料亭で美食を堪能できるのは、
子どもの頃から母が鰹節を削って出汁を引いてくれたからだ。
感謝!

コメント