CHANEL創業者の美学/マルセル・ヘードリッヒ「ココ・シャネルの秘密」

著者がココ・シャネルに出会ったのは1958年。シャネルが75歳の時。
引退後のおばあちゃんにインタビューしたものではない。

1909年パリに帽子のアトリエを開業したシャネルは、
ドレス、香水、ジュエリーと事業を順調に拡大していくが、
第二次大戦直前の1939年にすべてのビジネスを閉鎖し引退する。

約15年間の沈黙を経て1954年にファッション界に復帰。
「シャネル・スーツ」がアメリカで熱狂的に受け入れられ、
70歳をすぎて世界のファッション界の頂点に君臨していたのだ。

だから本書に多数引用されるシャネル本人の言葉はとても興味深い。
著者が冒頭に引用している言葉これだ。

わたしにとって一日ごとに、ものごとは単純になっていく。なぜなら、一日ごとに学ぶからだ。

人間には学習能力が備わっているから、本来はそうあるべき。
でも多くの人は変化を嫌い、時間を止めたままにしてしまったり、
ちょっと知恵が付くと、保身のためにわざと非効率なままにする。

ただ変化を追い求めていればよいというわけではない。

女たちは服を、男を、人生を変えたがる。彼女たちは間違っている。私は幸福に賛成である。幸福とは、変えることではない。

まずは一本筋の通った美学・美意識を持たなければ何も始まらない。

幸福とは自分の考えを実現することだ。

ファションにも普遍的な美しさがあり、シャネルはそれを追求した。

エレガンスとは、新しいドレスを着ることではない。人はエレガントだからエレガントなのだ。新しいドレスを着たからといって変わるものではない。よく選ばれた一枚のスカートと一枚のトリコを着てもエレガントになれる。エレガントになるためにシャネルで服を作らなければならないとしたら、なんと不幸なことだろう。作れる数にあまりにも限度があるから!

新しさ! 年中新しいものを作ることはできないわ。私はクラシックなものを作りたい。わたしはいつでもむらなく売れるハンドバッグを一つ持っている。みんなは、ほかの型のものをもう一つ売り出さないかと勧める。でも何のために? わたしは同じハンドバッグを二十年前から持っていて、よく知っている。どこにお金を入れて、どこにその他のものをいれるかよく知ってるわ。

ちなみにシャネルはスカート丈に特別こだわりがあり、
ちょうど膝が隠れる程度の丈が女性が一番美しく見えると考え、
その丈の長さは「シャネルレングス」とも称されているのだとか。

百人のうち一人も、きれいな膝をしている娘はいないわよ。

女たちは、もう少し長いスカートをはけば、自分の脚が美しくなるように思うけど、実際にはちっとも美しくなりはしないのだ。

ちなみにシャネルの死後にスカート丈の戒律は破られる。
1985年にミニスカートのシャネルスーツが登場。
バブル期の日本人も熱狂し「シャネラー」と称された。

もう少しファッションに関するシェネルの言葉をメモしておくと、

明るい色の服を着た女は、簡単には不機嫌にならない。

胸の広くあいた長いドレスほど、すぐに流行遅れになってしまうものはない。

なんとなくシャネルがドレスに求めた普遍的な美の形が見えてくる。

もちろんみんなが同じスタイルのファッションでいいはずがない。

かけがいのない人間であるためには、人と違っていなければならない。

そうそう本書の残念なところがひとつある。
1939~1954年の15年間の沈黙についての内容が非常に少ないこと。
15年のブランクからの復活が一番興味を惹かれるところなのだが…