人工知能 vs 棋士/大川慎太郎「不屈の棋士」

将棋界で観戦記者が、羽生善治、渡辺明をはじめとする代表的な棋士11名に、
将棋ソフト(人工知能)をテーマに行ったインタビューをまとめた一冊。

多くの棋士の発言から私なりの判断をまとめると、

  • 将棋ソフトの実力はトップレベルの棋士と同等かそれ以上で、
  • ベストコンデションの羽生さんならソフトに勝てるだろうというレベル。
  • 終盤の「詰み」の有無の判断で人間は叶わない。

オクスフォード大学の人工知能の研究者が2013年に発表した論文に示された、
コンピューターに代替される可能性ある職業のランキングが話題だが、

他分野に先んじて人工知能の脅威にされらされてるのが将棋界。
2015年10月には情報処理学会のコンピュータ将棋プロジェクトから、

「すでにコンピュータ将棋の実力は2015年の時点でトッププロ棋士に追い付いているという分析結果が出ています。残念ながら今日までトッププロ棋士とコンピュータ将棋の対戦は実現していませんが、事実上プロジェクトの目的を達成したと判断し、プロジェクトを終了することをここに宣言させていただきます。」

という宣言が発表されている。

こうした現状を受けて、人間同士の対局をする意義は何か?
そんな苦悩がかいま見える発言が目をひいた。

みんながいいパソコンとソフトを持って同じような研究をしたら、むしろ指す将棋は相当狭くなると思います。」(渡辺明

同じような将棋が増えていくと思うので、その中でいかに自分の特徴を出せるかが大事になるでしょうね。人と同じ将棋ばかり指していると自分の存在意義がどこにあるのかわからなくなってきます。」(森内俊之

将棋の世界が狭くなっていくような危機を覚える棋士がいる一方で、

人間同士の対局というのは、お互いにきちんと形が整っていて、きちんとした手順の流れの中で進んでいく。お互いに共通認識を持ってその中でやる感じですけど、それ以外の局面については実は深く考えていないんです。そうすると、本当に難しい局面に出合えていない可能性があります。」(羽生善治

将棋の可能性を広げてくれるツールという考え方もある。
羽生さんが第2期叡王戦(優勝者がソフトと対決)に出場した理由はここかも。
一番納得できる人間同士の対局の存在意義は、

いい手もあれば悪い手もあるのが将棋なんです。全部最善手を指さなきゃいけないということであれば、その一局で将棋はおしまい。結論が出てしまうわけだから。将棋は、そういう方法を人間に見つけさせるために生まれてきたものではないと思うんです。結論を出すためのゲームではない。将棋には、形勢が悪くても逆転するという魅力がある。それは持ち駒が使えるという、将棋ならではの魅力なんです。」(佐藤康光

人工知能と対峙するにあたっては、
人間らしさとは何か? 何が人の共感を呼ぶのか?
ここを考えることからはじめるのが重要なのかもね。