3.11 震災は日本を変えたのか

震災は日本を変えたのか東日本大震災からはや5年。
あれから震災を扱った様々な書籍が出版されたが、
この本のように中立的な立場で(←ここが重要)、
多くの議論を整理・編集したものはあっただろうか?

著者はマサチューセッツ工科大学(MIT)の
リチャード・J・サミュエルズ教授。
略歴にはMIT日本研究プログラム創設者とある。

震災発生から約2年間の日本国内で飛び交った情報を
政府や省庁、都道府県発表の資料はもちろん、
新聞、雑誌の記事に至るまで丹念に拾い上げ、

  • 安全保障
  • エネルギー政策
  • 地方自治体

の3つのテーマでまとめている。
またそれに先立ち、関東大震災や阪神淡路大震災を振り返り、

東日本大震災以前に日本で起きた震災の事例の多くは、それぞれに国民が国家のリーダーシップに不満を持つ一方で抜本的改革への期待を抱くものの、国内の政権争いにより改革の意欲がなえていったことを示している。」P147

歴史は繰り返すのでは…という著者の懸念は、
分析した2年間においては残念ながら当たってしまった。

安全保障、エネルギー政策、地方行政のどれをとっても、
震災前と比べて劇的な変化が起こったとは言えない。
もちろん長い目で見れば、

1995年の阪神淡路大震災の際は致命的なほど連携が取れていなかった自衛隊と地方自治体だが、のちに協力関係を深め、3.11の際には・・・自衛隊がだれからも意義を唱えられることなく地方自治体の機能を保佐したり、場合よっては完全に引き継いだ。」P335

といった変化も確認できるかもしれない。

またやや気になる記述としては(おそらく著者も気にしている)、

政党組織は1923年当時と同じくらいガタが来ており、民主主義体制下の合法的な組織としての自衛隊への国民の信頼は新たなレベルで急上昇したにもかかわらず、アナリストが東日本大震災を1923年の関東大震災と比較する際、彼らは後藤新平と彼の復興にかける壮大な夢が挫折したことばかり注目し、大日本帝国軍がどのように力をつけていったかは顧みない。」P341

昨年来、国会での集団的自衛権をめぐる論争部分は、
著者の分析期間にはかかっていないがどう捉えるべきか?

最後に「変化」という観点で3.11からの2年間を見たときに、
著者がもっとも高く評価しているのが菅直人元首相だった。

菅元首相についていえば、彼の政敵が描写したような不器用なアマチュアではなく、優れた「状況判断」を行っていたともいえるだろう。さらに菅元首相が原発推進派から反対派に転身したのも注目に値する。3.11をめぐるあらゆる出来事のなかで、大災害を踏まえて実際に志向を変えたリーダーは彼だけである。」P329

こうした結論にいたる過程は本書内で示されているが、
結局、私もマスコミの論調に振り回されていたことを反省。