白楽天「中隠」/官と隠のはざまを生きる

隠居するにはまだ若く、未だ出家するほどの決心も着かない。
富や名声への関心は極めて薄いが、食欲だけは捨てられない。
万人にいい顔はせず、頼りにしてくれる人だけに誠意を尽くす。
暇すぎるのは苦痛ゆえ、依頼がなくなるまでは少々の仕事を続ける。

最近の私をざっくりまとめるとこんな感じ。
目指すところは白楽天白居易)の漢詩「中隠」に近いかな。
生きる喜びを詠った漢詩はめずらしいから抜粋で紹介しよう。

 大隠住朝市 大隠は朝市(街の中心)に住み
 小隠入丘樊 小隠は丘樊(山の中)に入る
 丘樊太冷落 丘樊太だ冷落(寂しすぎる)
 朝市太囂諠 朝市太だ囂諠(騒がしすぎる)
 不如作中隠 如かず中隠と作り
 隠在留司官 隠れて留司の官(名ばかりの地位)に在るには
 似出復似處 出づるに似て復た處るに似(官僚のようでいて隠遁)
 非忙亦非閑 忙しきに非ず亦た閑なるに非ず(忙しすぎず暇すぎず)
 ・・・(中略)・・・
 人生處一世 人生一世に處る(人生は一度きりのもの)
 其道難兩全 其の道兩つながら全くし難し(たくさんのことはできない)
 賤即苦凍貴 賤くしては即ち凍餒(餓えや寒さ)に苦しみ
 則多憂患憂 貴くしては則ち患(悩み)多し
 唯此中隠士 唯だ此の中隠の士(中隠の人だけが)
 致身吉且安 身を致すこと吉にして且つ安し(幸多く心安らかだ)

小隠は世俗を避け山に籠もる隠遁のことを言う。
小隠を超越し、街の中心で隠遁生活を全うすることを大隠と言う。
そんな晋の時代の王康琚の言葉(反招隠詩)を受けて、
白楽天は官と隠の間のちょうどいいところを「中隠」と表現した。
同じような表現は、すでに白楽天以前にもあったけど、

  • 中庸の徳たるや、それ至れるかな論語
  • 足を知る者は富み、強めて行う者は志を有す老子

イマイチ実感がわかない、というのが正直なところ。
政治家と詩人のはざまにいた、白楽天の言葉は分かりやすい。
社会との距離をほどほどに保つことが幸せなのだと。

※参考図書…川合康三「白楽天-官と隠のはざまで」


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