ナシーム・ニコラス・タレブ「ブラック・スワン」を読むと、
カール・ポパーとマンデルブロの2人が特に気になって調べたくなる。
哲学者ポパーの方は、今のところかなりメダパニ(混乱)。
マンデルブロは「禁断の市場」って金融に関する著作があったよ。
内容が難しく睡魔の襲撃を受けるので、強くオススメはできない。
でも第12章「禁断の金融10ヵ条」だけは必ず読んでおきたい。
禁断の金融10ヵ条"Ten Heresies of Finance"
- 市場価格とは乱高下するものである。
- 市場とは、きわめてリスクが高いものである-既存の金融理論ではけっして起こるはずのないリスクが、現実には起こる。
- 市場のタイミングは極めて重要である。巨額の利益と損失は短期間に集中して起こる。
- 価格はしばしば不連続にジャンプする。そして、それがリスクを高くする。
- 市場での時間は、人によって進み方が違う。
- いつでもどこでも市場は同じように振る舞う。
- 市場は本来不確実であり、バブルは避けることができない。
- 市場は人をだます。
- 価格の予想は無理と思え。しかしボラティリティなら予測可能だ。
- 市場における価値は、限定された価値である。
2.~4.についてはここ1年で思い知らされたこと。
リーマンが破綻を機に「投資の研究家を目指してみよう♪」と決心したものの、
調べ、考えるうち、今までの投資理論があまりに馬鹿げたものに見えはじめ、
今ではすっかり訳が分からなくなってしまった。
「バシェリエ、マーコヴィッツ、シャープ、そしてブラックとショールズ…。彼らはみな、価格の変動が連続だと仮定しました。この仮定をしないと、彼らの導いた公式はすべて成立しなくなってしまうのです。」P312
5.は、私自身も最近、気になっているけどつかめない部分。
3.の考えとも関連するが、例えばリーマンショックから最近の回復までの間、
投資家は濃密な時間をすごしたはず。明らかに時の流れから脱線していた。
「ドラマのクライマックスでは一場面一場面に目が離せなくなり、退屈だとウトウトしてしまうような体験です。市場も同じなのです。」P316
6.の考え方も面白い。
たくさんのものが複雑に絡み合ったシステムには、それ自体に生命が宿る。
詳しくは知らないけど"複雑系"って分野の話を簡潔にするとそんな感じ。
「市場にはある種の生命が宿っているように思います。」P318
金融工学をはじめとする近年の経済学は、数学者によって形作られたもの。
もし市場に命が宿り、意志を持ってしまうなら、市場分析に数式は通用しない。
コメント
まともな研究者は相手にしないが、落ちこぼれ研究者や市井の「何か既存の研究に(理解はできないけど)大上段に文句を言ってみたい人」の一部には大人気のタレブに留まってしまわず、本当の一線級の知の巨人たるポパーやマンデルブローに関心を持たれるのは非常にいいことと思います。ポパーの著作にはまさにタレブのような姿勢が世に価値あるものとして認められない理由が述べられていますから、メダパニと言わずチャレンジを続けてみて下さい。
コメントありがとうございます。
これは2009年9月に書いた記事なのですが、この頃、金融・経済だけを見ていては世界を読み解くことはできないな、と痛感しました。
その後、哲学を含め古典を読み続け、ブログの内容もなんだか分からなくなっています(笑)あまりにとりとめがなくなるので、哲学については現在「時間論」に的を絞って読書中です。まだポパーには辿りつけていませんね。。。がんばります。
そうそう近く「古典読書×投資=長期投資家」みたいな立ち位置で某新聞社の取材を受ける予定です。面白い記事に仕上がったらブログでも紹介します。