数学・物理学と経済学の食べ合わせは悪い

昨日の記事を書いたすぐ後に、NHKの特集「マネー資本主義」を見ていたら、
またアンドリュー・ロー教授と遭遇。経済学と脳科学との融合を試みている?
番組では金融危機に関わった3人が取り上げられていて、比較すると面白い。

マイク・オシンスキーさん
 サブプライムローン関連のすごいパソコンソフトを開発した人。
 難しい数式分からなくても、データを入れると商品完成。
 今は仕事を辞めて牡蠣の養殖。自分も金融危機に責任があるのでは?と反省。
 お金はもういいよ、ってのどかに暮らしている。

テリー・デュホン(Terri Duhon)さん
 MIT卒で25歳の時、JPモルガンでCDSの開発に携わった才女。
 CDSの対象が会社のうちはよかったけど、住宅ローンはリスク計算が不能。
 JPモルガンが住宅ローンCDSから撤退。デュホンさん自身も警告記事を投稿。
 今はコンサル会社で、リスク管理やCDSの正しい理解を顧客に広めている。
 正しく使われていた頃まで戻って、金融危機をきちんと評価しようとしている。

ジョン・ソーさん
 超優秀な(?)数学者。お金のためにウォール街へ。
 現在はカタストロフィー債で天災の発生リスクを投資家に移転しようと研究。
 すでに名だたる金融機関からお金が集まり始めている。
 テクノロジーの問題はテクノロジーで解決する、と暴走中。

今後、一番お金を手にするのはジョン・ソーさんのような人だろう。
しかし同時に、社会に害悪をもたらすのも…。
数学・物理学と経済学を複雑に調理すると、食中毒を起こすのだ。
何も今回の金融危機で初めて分かったことではない。

ハイエクが1974年にノーベル経済学賞の受賞スピーチで警告を発している。
 ”The Pretence of Knowledge” (見せかけの知識)
スタグフレーション(インフレと失業率上昇の同時発生)が起きた原因は、
経済学者が”physical science”を取り入れたからじゃ!とグチっぽい講演みたい。
読もうとしても英文自体が難解だから、一文をちぎって貼っておこう。

“Unlike the position that exists in the physical sciences, in economics and other disciplines that deal with essentially complex phenomena, the aspects of the events to be accounted for about which we can get quantitative data are necessarily limited and may not include the important ones.”


私たちは将来の予測ができない、ってことぐらい充分分かってる。
でも、何かを決断するとき裏付けとなる数字やデータがあると嬉しい。
だから一見すると、経済・金融の世界で用いられる数式はとても重宝する。
ただ使ってるうちに感覚がマヒして、数字で未来を予言した気になってしまう。
常に原点を忘れず「便利だが気休めでしかない」って心がけが必要なのだ。