読んだ本と振り返る2009年

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今年は特に春以降ひまだったこともあり、250冊超の本が読めてしまった。
去年のちょうど倍くらいだけど、良い本に倍出会えたかというと…(苦笑)
本はたくさん読めばいい、というものではない。というのが今年の教訓だろうか。
今年読んだ、これはオススメ!という本を絡めながら、2009年を振り返ってみる。

年初に読んだ、堂目卓生アダム・スミスは時代にぴったりの一冊。
アダム・スミスは「国富論」で自由放任主義を提唱した経済学者とのイメージだが、
その土台には、人間観・社会観を論じた「道徳感情論」があった、と堂目氏は指摘。
スミスにとって、正義感によって制御された野心、および、そのもとで行われる競争だけが社会秩序と繁栄をもたらすのである」(P101)

アダム・スミスをはじめ、ジョン・スチュアート・ミルやジェレミ・ベンサムなど、
初期の経済学は、哲学者が経済にも首を突っ込むことで確立されたように見える。
経済学は人の幸福を扱う学問、と捉えれば、たしかに哲学が不可欠だろう。
しかし近年は、先ごろ亡くなったポール・サミュエルソンあたりから、
経済学が数学的な美しさを求めるようになり、その行き過ぎが今回の金融危機へ?

ジョン・C・ボーグル波瀾の時代の幸福論の中でも、
現代では社会でも、経済学や金融業界でも、あまりに数字を信頼しすぎている。…私たちは過去の経済統計や市場データに頼りすぎているし、物事を楽観視する傾向があるためにデータに間違った解釈を与え、信じるに値しないデータに信憑性を与えてしまう。」(P80)
とあり、やはりここらで修正が必要なのかもしれない。
でも人類の歴史は振り子のようなもの。ちょうどいい塩梅にはたぶん収まらない。

数学を駆使してどんどん複雑になる投資や金融の理論。
そんな最新の理論を一般人にも分かりやすく説明してくれる方が今年亡くなった。
ピーター・L.バーンスタイン。その遺作が「アルファを求める男たち」。
この本をきっかけに、アンドリュー・ロー教授の適応的市場仮説の存在を知った。
先端の研究者は、効率的市場仮説やパッシブ運用からの脱却をはじめていたのだ。

この先どこから最新の情報が得られるのかな?と困った時期もあった。
でも、COP15で今年の1大テーマだった環境問題などから成長の限界は明らかで、
リターンを追求するだけの研究は、もはや時代の要請に応えるものではないかも。

難しいものを分かりやすく、という点で今年最も感動した本は、
論語を物語風にアレンジした、下村湖人論語物語
今回の金融危機で、しばらくは道徳・倫理が重要視される時代が続くかも。
となると、やはり読んでおきたい不朽の名著といえば「論語」。
でも、岩波文庫の論語を1ページ目から順に読もうとしても、眠気に襲われる…。
見栄を張って、原文と格闘する必要はない。内容を理解することが大事なんだ。

難しい専門用語を並べて、物事を理解したような気持ちになる。ありがちな間違え。
本当に理解できているのなら、万人に分かる言葉で説明ができるはず。
どんな時もシンプルが一番。そしてシンプルに語るには深い理解が必要なんだ。

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