菜根譚に出会う

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菜根譚(さいこんたん)は、中国・明の時代に書かれた随筆集。

「中国五千年の人生訓を集大成した奇書」と名高い傑作らしいが、
中国では忘れ去られ、江戸時代以降の日本で読まれ続けたらしい。
1980年代後半になって、日本における「菜根譚」の人気を伝えた記事が、
香港経由で中国全土に広まり、ようやく祖国で認知されたという不思議な本。

気に入った部分をいくつか。


前集53

人の境遇はそれぞれ異なる。運がいい者もいれば、悪い者もいる。
そうした世の中で自分だけ運をつかもうと望んでも叶うまい。
人の感情は常に変わる。理に叶う時もあればそうでないときもある。
それなのに、人に理にかなうように望んでも仕方あるまい。
こうしたことから自他を比較して、中庸を見ることもひとつの良策である。

前集55

贅沢な者はいくら富んでも満足することはない。
貧しくともつつましく暮らしながら余裕をもつ方がよほどいいではないか。
有能な者はいくら一所懸命になって働いても人の恨みを買う。
不器用でも気楽に日々をすごし自然のままに生きる方がましではないか。

前集56

事業を興しても後世のために役立たないのであれば、
華やかに咲いた花が一時美しさを見せた後に朽ちてしまうようなものだ。

前集72

陽気は万物を生き生きとさせるが、寒気は生き物に死をもたらす。
同様に、冷たい心の者には幸福が訪れることは少ない。
穏和で温かい気持ちの者には多くの幸福がもたらされるのである。

前集88

静寂な環境で得られる静けさは、真の静けさとはいえない。
喧噪にあっても心の平静を保てるならば、道を究めた者といえよう。
享楽で得られる楽しさは、真の楽しさとはいえない。
苦労の中に楽しみを見出してこそ、真の心をもつ者といえよう。

前集102

卓越した文章とは、とくに奇抜なところがあるわけではない。
ただ、書き手の思いが読み手の心に素直に届くだけである。
徳を極めた者とは、一見普通の人と変わるところはない。
ただありのままに生きているだけである。

後集21

身の回りの現状に満足する者は
仙人のように心安らかに毎日をすごすことができるが、
不満に思う者は凡庸な日々に悶々とする。
世の中のすべては因果を結ぶ。
物事をよく考えれば生気が生まれ、悪く考えれば悪い方に導かれる。

後集25

人と先を争えば小道はさらに狭くなるが、
一歩退けば、そのぶん道は広くなる。
味付けの濃い料理はすぐに飽きられるが、
少しあっさり味付けすることで、そのぶん料理は長く好まれる。

後集70

周囲からの賞賛や非難に惑わされるな。
落ち着いた気持ちで庭先の花が咲いては散りゆく姿を眺めていよう。
出世や損得にも心を乱されないことだ。
落ち着いてよく見ていれば、空に浮かぶ雲も風まかせに形を変えていくだろう。

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コメント

  1. Ito より:

    この本読みやすいし面白いですよね。
    学生時代に中国の古典いろいろ読んでましたが、『菜根譚』はタイトルのインパクトが強くて今でも心に残っています。内容はほとんど忘れてしまいましたが・・・。

  2. まろ@管理人 より:

    私は今、学生になったので(笑)、なるべく古典をたくさん読もうと考えています。