増えすぎた森林の副作用/太田猛彦「森林飽和」

人里への熊の出没、海岸道路の崩壊、花粉症…。
これは19世紀には「はげ山」だらけだった山林が回復し、
土砂災害、洪水氾濫災害、飛砂害の減少
と引き替えに起きた副作用だった。

「質」はともかく日本の森林の「量」の増加はすさまじい。
林野庁の「平成26年度 森林・林業白書」では、
この半世紀、森林面積は2500万haで横ばいにも関わらず、
森林蓄積(樹木の体積)は約2.6倍!(人工林は5.4倍)

平成26年度 森林・林業白書

ところでかつての山林の風景はどんなものだったのか?
東大名誉教授の太田猛彦は「森林飽和」のなかで、
歌川広重「東海道五十三次」の新たな見方を教えてくれる。

歌川広重「東海道五十三次・日坂」

江戸時代に描かれた風景画の大部分は、
はげ山にちょこっとマツが生えているだけの荒廃地。。。
そういえば森林破壊後の山には松林ができるんだった。

局地的な豪雨による土砂・洪水災害が増えたように思えるが、
森に緑が戻ったことで19世紀以前に比べ、確実に減少。

でも代わりに川の河口まで土砂が到達せずに海岸線の後退。
たとえば2006年に起きた西湘パイパスの崩壊につながっている。
著者は人工的に山崩れを起こす治山事業が必要と指摘する。

とはいえユクスキュルの「環世界"Umwelt"」の概念にあるように、
私たちは現時点での知覚の枠内でしか世界を認識できないから、
将来的にも「こんなはずでは!」って話が出てくるだろう。
信念・信条を持たない方が世界の本質に近づけるのかもしれないね。