キラキラネーム問題はいつの時代も/枕草子、徒然草、玉勝間

読めない名前。
キラキラネームやDQNネームと批判されるけど、
元をたどると日本語の成り立ちに由来したりする。

古代日本は固有の文字を持たない無文字社会
弥生~古墳時代に中国からの移民によって漢字が伝わった時、 
当時の日本人は自分たちの発音と漢字の発音をつき合わせ、
万葉仮名」を生み出したのが、日本語の源流。

万葉仮名の具体的な使用例を紹介すると、

  • 夜麻(やま=山)
  • 可波(かは=川)
  • 比登(ひと=人)
  • 波奈(はな=花)

このように漢字の意味を捨て、音だけ合わせているのがよく分かる。
余談だが「共感覚」という特殊な才能が持つ人が見ると、
音や文字に色を感じるらしく、万葉仮名は色でリンクしているとか。
※関心のある方は…岩崎純一「音に色が見える世界」

言語の起源にこんな背景を持つ国だから、
時代を超えてキラキラネーム問題が見て取れる。

まずは平安時代の清少納言枕草子」149段。

見るに異なることなきものの、文字に書きてことことしきもの。 覆盆子(いちご)。鴨頭草(つゆくさ)。芡(水ふぶき)。蜘蛛。胡桃(くるみ)。文章博士。得業生(とくごうのしょう)。皇太后宮権大夫(こうたいごうくうのごんのだいふ)。楊梅(やまもも)。虎杖(いたどり)は、まいて虎の杖と書きたるとか。杖なくともありぬべき顔つきを。

見た目は普通なのに、漢字に書くと大げさなものリスト。
蜘蛛や胡桃は今も変わらないけど、覆盆子は消えた。
変な名称は時代とともに淘汰されていくようだ。

続いて鎌倉時代の兼好法師徒然草」116段。

人の名も、目慣れぬ文字を付かんとする、益なき事なり。何事も、珍らしき事を求め、異説を好むは、浅才の人の必ずある事なりとぞ。

いたずらに珍しい名をつけるのは浅知恵の証と怒ってる。
現代でもキラキラネームは暴走族「夜露死苦」論がある。

ちなみに明治時代に森鷗外が好んでキラキラネームをつけたけど、
たとえば長男の「於菟(オットー)」は、中国古典「春秋左氏伝」に由来。
このレベルなら兼好法師に怒られないだろう。

江戸時代にも読めない漢字での名づけがはやり、
「韻鏡名乗字大全」という命名マニュアル本が大人気。
本居宣長は「玉勝間」の中でこう嘆く。

近き世の人の名には、名に似つかはしからぬ字をつくこと多し、またすべての名の訓は、世の常ならぬが多きうちに、近きころの名には、ことにあやしき字、あやしき訓有て、いかにとも読みがたきぞ多く見ゆる、すべて名は、いかにもやすらかなる文字の、訓のよく知られたるこそよけれ。

名前は読みやすい方がいいじゃないと宣長。
でも分かっちゃいるけどやめられない。
それが日本人にとってのキラキラネームなのかもね。

※参考図書…伊東ひとみ「キラキラネームの大研究」