散る桜の和歌/百人一首33「静心なく花の散るらむ」

散り始めた桜。
その情景を詠った百人一首の和歌と言えば、

ひさかたの 光のどけき 春の日に
静心なく 花の散るらむ

古今和歌集の撰者の棟梁、紀友則の一首。

上三句に穏やかな春の情景美を描く一方で、
下二句では静けさなく花が散る姿を描く対称美。

紀友則は古今集の完成を待たずに死去。
同じく古今集の撰者で友則のいとこの紀貫之は、

明日知らぬ わが身と思へど 暮れぬ間の
今日は人こそ 悲しかりけれ

と友則追悼の和歌を古今集(838)に残している。
おまけで散る桜を詠った貫之の歌も見ておこう。

桜花 散りぬる風の なごりには
水なき空に 波ぞ立ちける

桜散る 木の下風は さむからで
空に知られぬ 雪ぞ降りける

散る桜の面影を「波」や「雪」に見立てた二首。

心にうつされた美の面影を言の葉にのせたのが和歌。
また本来の姿ではない美を想起させる見立ての美学。
そんな日本の美意識がギュッとつまった名歌だね。