柿本人麻呂の和歌で詠む七夕の心

織姫と彦星の七夕にまつわる星の伝説。
万葉集の時代には、すでに日本人の心をつかんでいて、
とくに10巻には98首もの七夕の和歌が並んでいる。
その中から柿本人麻呂が詠んだものをいくつか。

夕星も 通ふ天道を いつまでか 仰ぎて待たむ 月人壮士

すでに宵の明星(夕星)も空を往き来している。
月よ、織姫と彦星の逢瀬をいつまで待たせるつもりのなか。

月が空を渡り終えてから2人が出会う、と考えられていたようで、
月人壮士(月の舟を漕ぐ人)って表現が万葉集にはちらほら。
三日月を舟に見立てたり、月の神が海の信仰と結びついてた?

天の川 水蔭草の 秋風に 靡かふ見れば 時は来にけり

我が待ちし 秋萩咲きぬ 今だにも にほひに行かな 彼方人に

天の川に影を映す草(水蔭草)が秋風になびき、萩が咲いた。
今年も待ちに待った七夕がやって来たんだ(時は来にけり)。

旧暦の七月七日は秋にあたる。
だから七夕は秋の情景と共に詠われている。

万代に たづさはり居て 相見とも 思ひ過ぐべき 恋にあらなくに

一年に 七日の夜のみ 逢ふ人の 恋も過ぎねば 夜は更けゆくも

何万年も一緒にいても想いが晴れるような恋ではないのに、
七夕の一夜はあっという間に時間がすぎていく。。。

織姫と彦星が会えるのは、1年にたった1回だけだけど、
2人の恋はいつまでもいつまでも色あせることがない。
一方、地上に住む私たちの心は、うつろいやすいもの。
七夕の物語が何千年も人の心をつかんでいる理由はここかな。


【七夕の和歌シリーズ】