復興の勧進上人を誰が担うのか?

経済学の「効用」とはすなわち「欲望」のこと。
欲望の制御なくして経済社会の秩序と発展は成しえない。
経済学の祖、アダム・スミスが「道徳感情論」に描いたことだ。
そして欲望の制御と「宗教」とは密接に関わっていた。

長部日出雄「仏教と資本主義」では、
第1章でマックス・ヴェーバーの思想を簡潔に編集した上で、
奈良時代に東大寺の大仏建造に関わった行基に着目する。

行基は死後、地獄に堕ちることを恐れた当時の人々に、
利他の善行を積めば菩薩となり、地獄行きを免れると説いた。
そしてここに資本主義の精神が生まれる。

土地の豪族に資本を出させ、布施屋を建てて粥を施し、集まってくる大勢の窮民の力を集め、唐で学んできた灌漑や土木の新技術を用いて、農業用の池や溝を掘り、堤を築き、道を開き、橋を架けると、土地が潤って、豪族には出した以上の元手が戻ってきます。」P57

そして大仏建造というアジア史の残る未曾有の大事業を
資金面、精神面で支えたのが行基の作った仕組みだった。
以後、勧進上人(勧進聖)が人々から寄付を募り、
人々の力を結集して公共工事の担い手になっていく。

とくに源平合戦や自然災害に見舞われた平安末期~鎌倉時代は、
経済力に乏しかった国家よりも、勧進上人が復興の担い手
だった。
ちなみに平安末期に焼け落ちた東大寺の再建では、重源が中心となり、
西行も鎌倉幕府や奥州藤原氏へ勧進の旅をしたことが有名。
※参考…五味文彦「中世社会と現代」P18~21

ふと現代に目を移せば、国家の財政状況はこの頃と似ているかも。
国家の力では遅々として進まない、東日本大震災後の復興。
投資家の私としては金融界の動きに期待していたけど…。
セキュリテ被災地応援ファンド」に追随する動きは見られず、
大手は「復興」を銘打った妙な投資信託の販売が目につくばかりだった。

かつて勧進上人が担った役割を受け継ぐのは誰なのか?
歴史を振り返ると今の日本はここがモヤっとしている。